この記事でわかるポイント!
- 1P(カービィ)と2P(ワドルディ)の間に横たわる、プレイの体験格差。
- 進化するコピー能力のワクワク感と、それを見守るしかない2Pの疎外感。
- ほおばりヘンケイやトレジャーロードで2Pが直面する、虚無の待機時間。
- 格差を帳消しにする「ボス戦の共闘」と「対等なミニゲーム」の楽しさ。
文明の廃墟に、ピンクの悪魔が降り立つとき
任天堂の看板タイトル、それも「星のカービィ」が満を持してフル3Dアクションへと舵を切った。このニュースを聞いたとき、私はかつての名作「星のカービィ 64」が頭をよぎりました。

「64」はストーリーもしっかりしていて面白いのですが、特筆すべきは一緒にプレイできるミニゲームの完成度です。けんけんレースや落ちものパズルに、文字通り家族全員で夢中になっていた。おそらく本編よりもミニゲームをプレイしていた時間の方が長かったのではないか、そう確信できるほどに熱い原体験でした。
そのため、本作「ディスカバリー」が発表された時も、私はあの頃の空気感を期待してしまっていた。「お、64時代のミニゲームの熱量が、そのまま3D協力プレイに内包されるのかな?」と。しかし、実際に妻と一緒にコントローラーを握り、全ステージをクリアした今、抱いている感情は少し複雑です。
結論から言えば、本作は間違いなく良作です。ただ、2人プレイという仕組みにおいて、ある種「残酷な格差」を生んでいることもまた事実。 公式の華やかな映像だけでは見えてこない、地味ながらも深刻なプレイヤー間の温度差。バンダナワドルディとして、カメラの端っこで槍を振り回し続けた15時間の記録を、少し噛み砕いてレビューしてみます。
バンダナワドルディという名の「不可視の束縛」

本作の2人プレイにおいて、2Pは自動的に「バンダナワドルディ」を担当することになります。槍を使いこなし、ホバリングもできる。一見するとカービィの頼もしい相棒に見える。しかし、ここには逃れられないシステム上の制約がありました。
カメラの主権は常に1Pにあり

3Dアクションにおいて、カメラワークは命。そして本作のカメラは、徹底して1P(カービィ)を世界の中心として捉え続けます。2Pが少しでも背景の気になる小道を探検しようとすれば、無情な画面端に押し付けられ、最終的にはカービィの隣へと強制ワープさせられる。
この引き戻しが、探索の楽しさを微妙に削いでいきます。「あそこに隠しアイテムがあるかも」と思って近づいても、カービィが先に進めばワドルディに自由はありません。この仕様は、2Pを対等な冒険者ではなく、あくまで1Pに追従するだけの護衛として定義している。 自由奔放に遊びたいゲーマー同士だと、この見えないリード(首輪)の存在が、次第に無視できないストレスとして蓄積していくのは避けられません。
もし家族でプレイするなら、あえて「ゲームに慣れていない方を1P」に据えることを強くお勧めします。逆にプレイに慣れている人が1Pを握ると、その移動速度に2Pがついていけず、常に画面外からワープを繰り返すという切ない事態を招きかねません。
コピー能力という「特権」との格差

カービィの最大の魅力、それは敵を吸い込み、その能力を自分のものにする「コピー能力」です。ド派手な炎を吐き、巨大な剣を振り回して無双する1Pの横で、2Pに許されたのは最初から最後まで槍一本での戦いのみ。
本作では能力の進化系統もあり、変化のワクワクが止まらない。そんな「ゲームの根幹」とも言える楽しさを、1Pが独占しているという構図はあまりに残酷です。もちろん槍のアクションも洗練されていますが、隣でドラゴンが火を吹いている最中に、チクチクと槍を突く虚しさは、協力プレイとしてのバランスに一石を投じざるを得ないポイントでした。
「ほおばりヘンケイ」の陰で待機する時間

本作の目玉ギミックである「ほおばりヘンケイ」。自販機や車を丸呑みにして特殊なアクションを繰り出す。このビジュアルのインパクトとプレイ体験の刷新は、文句なしに素晴らしい発想です。しかし、ここでも2Pプレイヤーは試練に立たされます。
共闘感の消失と「相乗り」の虚しさ
カービィが「くるまほおばり」で疾走している間、ワドルディは背中にちょこんと乗っているだけ。あるいは「かいだんほおばり」で進む横で、ただ歩調を合わせてトコトコ歩くだけ。この間、2Pには攻略に寄与しているという感覚がほとんど存在しない。
ほおばりヘンケイが主役となるギミック攻略の場面では、2Pは完全な観客へと成り下がります。「すごいね、面白いね」と1Pのプレイを褒める役割に徹すること。それが2Pに求められる「大人の対応」になってしまっている。 マルチプレイとしての共闘を期待していた私にとって、この時間の積み重ねは冒険の熱量を少しずつ削いでいくものでした。
やり込み要素の断絶:トレジャーロードの罠

ステージの合間に現れる制限時間付きの「トレジャーロード」。能力を使いこなす技術が試される、非常にやり応えのあるボーナスステージです。しかし驚くべきことに、このやり込みの核となるトレジャーロードは1P専用のモード。
それまで2人で仲良く冒険していたのに、このエリアに入った瞬間、1Pがストイックにタイムアタックに励むのを、2Pは隣でぼんやり眺める数分間が訪れる。マップの至る所に点在しているため、協力プレイのテンポがその都度ぶつ切りにされてしまう。 せっかくの熱量をシステム側から冷却されているような、そんな寂しさを感じずにはいられませんでした。
それでも、この冒険を共にする価値
散々不満を書き連ねましたが、それでもなお、私は本作を遊んでよかったと断言できます。格差や疎外感を超えた先に、このゲームでしか味わえない体験があったからです。
ボス戦に宿る、真の「共闘」

道中のギミック攻略では蚊帳の外だったワドルディが、唯一、カービィと肩を並べて戦える瞬間。それがボスバトルです。「ワイルドモード」で挑むボスたちは、適当なボタン連打では返り討ちに遭うほどに手強い。
カービィがカウンターを狙い、その隙を縫うようにワドルディが槍を連打してダメージを稼ぐ。体力が減れば、落ちている食べ物を「口移し」で分け合い、共に死線を潜り抜ける。この瞬間、ようやく格差は消え去り、最高のタッグとして緊張感のある共闘が成立する。 最終盤の絶望的な状況を2人で突破したときのハイタッチは、これまでの不満をすべて洗い流してくれるほどに痛快でした。
釣り堀に流れる、対等な時間

そして個人的に最も心を救われたのが、町でのミニゲーム、特に「釣り」の要素です。本編での「主役と護衛」という上下関係から解き放たれ、二人並んでのんびりと糸を垂らす時間は、まさに至福。
このミニゲームは、ボタン入力の正確さを競うシンプルながらも熱いもの。釣果によって一喜一憂し、時には巨大なヌシを釣り上げて驚く。ここではカービィもワドルディも関係なく、対等な一人の「釣り人」として遊べる。 本編の冒険で少し疲れた心を癒やす、最高のオアシスでした。かつての「64」のミニゲームに熱中した記憶が、少しだけ重なった瞬間でもあります。
格差を乗り越え、最高の思い出にするために
最後に、これから家族やパートナーと遊ぶ予定の方へ。小さな工夫ですが、以下のようにプレイすれば大分快適にプレイできると思います。
- 初心者が1P、ゲームに慣れている方が2Pをプレイ。
- ワドルディの村でのミニゲームは、積極的に遊ぶ(特に釣りは対等で面白い)。
- 子供同士で遊ぶ場合は、交代ルールをあらかじめ決めておく。
星のカービィ ディスカバリーは、確かに2Pプレイヤーにとって不平等な設計かもしれない。 しかしそれは、任天堂がプレイヤーを助ける補助的な要素、親/子供の協力関係という構図で、見守りプレイのような、優しさを前提に設計されているからなのかなと思います。その格差さえ許容できるのであれば十分楽しめる作品でしょう。

